日系 Nikkey パートナーズ

日系人、ボランティア、開発について、自分の勉強のためにも書いていきます。

日系四世向けビザについて反対ですか、それとも「条件付き賛成」?

日系四世のワーキングホリデービザについて、7月31日付けで読売新聞でも報道されました。

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その内容が、ブラジルで下地議員が説明したものと異なるということで、現地日系社会では戸惑いがある模様です。特に、日本語能力(能力試験N4レベル=基本的な日本語を理解できる)が要求されること、家族帯同が不可ということが大きな違いのようです。N4だと、ある程度勉強する必要がありますからね。

ただ、単なる「労働力の確保」ではなく、「次世代を担う4世が日本での生活を体験して現地と日本の懸け橋となる」というワーキングホリデーの主旨に近い内容になっているようにも感じられます。

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ニッケイ新聞には下地議員の説明資料も掲載されていますが、具体的な内容は書かれていないですね。

さて、ブラジルを中心に、この四世問題は非常に関心が高く、ブラジルのニッケイ新聞では、13回にわたって「四世ビザについて『条件付き賛成』?」という特集を組んでいます。

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特集記事では、日本に滞在経験のある日系人、デカセギ日系人のサポート団体、日系人の人材派遣会社等々、幅広い方々からの賛否両方の意見が出ていて参考になります。以下、いくつか気になる意見・情報を抜き出してみました。

  • CIATE(日伯雇用サービスセンター )の調査によると、四世が訪日を望む理由は「観光地を訪れたい」(48・3%)、「職業経歴を積みたい」(43・1%)、「文化交流」(42・9%)、「留学」(34・1%)、「お金を稼ぎたい」(34・1%)の順位。  「生活に追われてお金を稼ぐため」が中心だった従来のデカセギ訪日の頃とは違って、留学や観光の機会として日本就労を望む回答が多い。
  • 他方で、就労を希望する四世の多くが「日本語が全くできない」。「日本語もでき、高い能力を持つ人材なら、日本からの進出企業で職が見つかる。普通はそんな人材なら、わざわざ日本で工場労働しようとは考えない。」
  • 単純な労働者として行くことに反対の意見としては、これまでの経験から、「ブラジルでの勉強や経験を活かして日本で専門の職を得るのは、とても難しい」、「四世ビザを解禁するにしても、ただの工場労働なら行かない方が良い」、「ブラジルで学歴があるなら、デカセギで日本に行くことはお薦めできない」。
  • 特に家族で来日する場合、子どもの教育も含め「日本政府が外国人労働者をちゃんと受け入れる体制」を作ることが条件。「日本側の受入れ体制ができていないのに四世の人全てにビザを与えるのは疑問がある」との意見も。
  • 日本語教育+職業能力育成訓練』という制度があれば、日本人オーナーや工場長の下で、日系人責任者という形で部品加工の2~3次下請けとして、日本の物作りを支えることも可能になる。高齢化が進む日本の中小企業の後継者にもなるかもしれない。こうした未来を見据えた制度が必要。

ブラジル等の現地日系社会に加え、日本国内でも賛否両論があると思います。本制度導入前にはパブリックコメントも求めるようですので、多様な意見を聴取して、より良い制度になることを期待しています。

 

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日系4世向けのワーキングホリデー制度案をブラジル・ペルーで説明

日本維新の会下地幹郎議員他がブラジル、ペルーを訪問し、日系4世向けに検討されているワーキングホリデー制度について日系団体・日系人に説明されました。

下地議員は以前より日系人支援・連携に積極的で、今年2月には日系4世の定住在留資格について安倍総理に質問し、総理から前向きな答弁を引き出しています。

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その後、経済界の期待もあり、自民党の1億総活躍推進本部の提言書に「日系四世の日本での活躍」の項目が設けられ、その具体策として「日本語を学びながら働ける四世向けのワーキングホリデー制度の新設」が提案されました。

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下地議員はその提案の具体化に取り組まれているようです。ブラジルの邦字紙の報道からまとめると、制度案の概要は以下の通りです。

●18歳以上の日系4世を対象とした3年間のビザ

●日本語や文化習得のため労働と学習を義務付け(受け入れ先の日本企業にも制度利用者に対する日語研修プログラムの作成と実施が求められる。)

●配偶者や子どもの同伴できる可能性

●3年間のビザ終了後は、(1)4世にそのまま定住権を与える(2)無犯罪の4世に定住権を与える、の2案を検討中

●今年11月から開始される見込み(8月:制度設計、9月:パブリック・コメント、10月:最終検討、11月:確定、法務省の省令として発布)

 

日本政府はこれまで18ヶ国を対象にワーキングホリデー制度を導入しており、「二国・地域間の相互理解を深めることを趣旨」として、「休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める」としています。その基本的な要件は、期間は1年、子又は被扶養者を同伴しないこと、有効な旅券と帰りの切符(又は切符を購入するための資金)を所持すること、滞在当初の生計維持に必要な資金を所持すること等です。
従来のワーキングホリデー制度は、その名称のとおり「休暇」が主目的ですが、現在検討されている日系人向けの制度は、「4世の若者が日本に滞在し、働くことができる制度を目指したい」とあるように、やはり「就労」のほうに重点が置かれているようで、外国人の技能実習制度に類似する要素もあるように思われます。

いずれにしろ、日系4世が日本での在留資格を得るチャンスが与えられるという点では非常に重要な一歩です。他方で、配偶者や子供も同伴可能とあり、従来にも増して子弟への教育環境の充実等、しっかりした受け皿作りを同時並行で行う必要があります。

(良い悪いはともかくも)日系人に限らず、日本で働く外国人が増え、それに伴い外国にルーツを持つ子どもが増加している中、単なる労働力ではなく、きちんと家族で生活できる環境・サポート体制を整備することが必須と考えます。

日本、日系人、日系社会、ぞれぞれがWINの関係になるような制度になることを切に望んでいます。近江商人の心得のように三方良しで。

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メジャーリーグ2017年前半戦終了、日系人プレイヤーの活躍は?

 2017年のMLB前半戦が終了しましたので、日本にルーツを持つ日系人選手の成績をまとめてみました。

「christian yelich 2017」の画像検索結果

クリスチャン・イエリチは悪くはないものの、WBC出場を経てさらに飛躍するかと期待していましたが、昨年と比べると全体的に成績を落としています。ホームランも昨年の21本から、前半は8本のみ。後半戦の活躍が待たれます。カイル・ヒガシオカは初めてメジャーに昇格したのが日本でも話題になりました。しかし初ヒットは出ず。サンチェスが戻ってきてマイナー落ちしてしましたが、次のチャンスをものにしてほしいですね。

今回は、日系アメリカ人だけでなく、日系ブラジル人もリストアップしました。期待はブレーブスにトレードされたゴハラ投手です。AAレベルではまずまずの成績を残しています。

今年、新たに米大学からヒウラや、ブラジルからパルディーニョも米球界入りしました。若手がメジャーに上がることを期待します!

 

【野手】

1、クリスチャン・スティーブン・イエリチ(Christian Stephen Yelich) 外野手

Miami Marlins

1991年12月5日(25歳)

日系アメリカ3世(母型の祖父が日本人)

 Christian Yelich

LEVEL 試合 打数 安打 打率 HR 打点 盗塁 OPS
MLB 84 325 91 0.280 8 43 8 0.765

 

2、カート・スズキ(Kurt Suzuki) 捕手

Atlanta Braves

1983年10月4日 (33歳)

日系アメリカ3世(祖父母が愛知県名古屋市出身)

 Kurt Suzuki

LEVEL 試合 打数 安打 打率 HR 打点 盗塁 OPS
MLB 41 128 32 0.250 7 24 0 0.803

 

3、ダーウィン・バーニー(Darwin Barney) 内野手

Toronto Blue Jays 

1985年11月8日(31歳)

日系アメリカ3世(母方の祖父が日本人、祖父の苗字は山本)

 Darwin Barney

LEVEL 試合 打数 安打 打率 HR 打点 盗塁 OPS
MLB 63 156 36 0.231 2 11 3 0.572

 

4.カイル・ヒガシオカ(Kyle Higashioka) 捕手

RailRiders (AAA)

New York Yankees

1990年4月20日 (26歳)

日系アメリカ3世

 Kyle Higashioka

LEVEL 試合 打数 安打 打率 HR 打点 盗塁 OPS
AAA 13 49 14 0.286 2 11 0 0.829
MLB 9 18 0 0.000 0 0 0 0.100

 

5.加藤・ジョン・豪将(Gosuke Kato) 内野手

Tampa Yankees   (A-Advanced)

1994年10月8日(22歳)

両親とも日本人、カリフォルニア生まれ、日本とアメリカ両方の国籍を持つ。

 Gosuke Katoh

LEVEL 試合 打数 安打 打率 HR 打点 盗塁 OPS
A(Adv) 45 152 40 0.263 4 20 6 0.748

 

【投手】

1.ジェレミー・ガスリー(Jeremy Guthrie) 投手

Acereros del Norte (AAA)

Washington Nationals(MLB)

1979年4月8日(37歳)

日系アメリカ4世(母親が日系アメリカ人)

Jeremy Guthrie

LEVEL 登板数 投球回数 セーブ 防御率 WHIP
AAA 8 7.2 0 0 0 8.22 2.61
MLB 1 0.2 0 1 0 135.00 15.00

 

2.ルイス・ゴハラ(Luiz Gohara)

Mississippi Brave(AA)

1996年7月31日(20歳)

日系ブラジル人サンパウロ州出身)

Luiz Gohara

LEVEL 登板数 投球回数 セーブ 防御率 WHIP
AA/A(Adv) 17 76.2 4 2 0 2.47 1.17

 

3.ジョーダン・ヤマモト(Jordan Yamamoto) 投手

Carolina Mudcats(A-Advanced)

1996年5月11日(20歳)

日系アメリカ3世(日本人を祖父に持つ)

 Jordan Yamamoto

LEVEL 登板数 投球回数 セーブ 防御率 WHIP
A(Adv) 13 54.0 2 2 1 3.50 1.28

 

4.ボー・タカハシ(Bo Takahashi) 投手

Visalia Rawhide(A-Advanced)

1997年1月23日(20歳)

日系ブラジル人サンパウロ州出身)

Bo Takahashi

LEVEL 登板数 投球回数 セーブ 防御率 WHIP
A(Adv)/A(Full) 15 82.1 5 6 0 3.72 1.09

 

5.ダニエル・ミサキ(Daniel Ryuske Missaki) 投手

AZL Brewers (Rookie)

1996年4月9日(21歳)

日系ブラジル人静岡県富士宮市出身)

Daniel Missaki

 

故障者リスト入りし、登板なし。

 

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訃報・神内良一さん、南米日系社会の医療・福祉等に多大な貢献

消費者金融プロミスの創業者の神内良一さんが、6月27日、亡くなりました。90歳でした。

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神内さんといえば、ブラジルをはじめとした南米の日系社会の医療福祉等に多大な貢献をされてきた方です。1987年にプロミスの会長職を離れたのち、1989年に神内良一国際福祉事業所を開設、1997年には「日本国際協力財団」を設立し、発展途上国支援事業、日系支援事業を幅広く実施されました。

「日本国際協力財団」HPには、神内さんの日系移民への思いが以下の通りつづられています。
「少年時代は、当時流行していた「冒険ダン吉」に憧れ、20代には南米ブラジルへの移住を真剣に考える等、年少の頃から海外で飛躍する夢を持って育ちました。
(中略)
国策により南米に移住を余儀なくされた日系移民の方々の筆舌に尽くし難い苦労の歴史や、戦後中国に取り残された残留婦人の方々の悲惨さを直接、或は間接に見聞きするに及び若い頃の自分が抱いた夢の甘さを痛感させられ、益々こうした異国に生きる同胞の方々への支援の気持ちは強いものになってきました。日系移民の方々を支えてくれた南米各国や、中国国民の方々への報恩の気持ちが強くなる一方、こうした国々を訪れるにつれ、未だ世界の貧困に喘ぐ人々、恵まれぬ人々の存在の多さを実感するに及んで、国際福祉事業こそが私の天授の仕事であると確信し、この道に終生を掛ける決心をしました。」

 

「日本国際協力財団」のHPには、以下のとおり、これまでの日系社会支援の実績が記載されています。ブラジルの「サンパウロ日伯友好病院」や「アマゾニア病院」、ペルーの「移住百周年記念病院」など、重要な日系医療施設へ支援されてきたことがわかります。神内さんからの支援がなければ、ここまでの施設の充実は実現しなかったことでしょう。まさに、「日系社会の恩人」といえる方ですね。

 

「公益財団法人 日本国際協力財団」の事業概要(日系社会関連)

ブラジル連邦共和国
サンパウロ日伯友好病院の増床及び医療機器支援
サンパウロ日伯友好病院総合医療検査センター建設支援
サントス厚生ホーム施設整備支援
アマゾン日伯文化交流センター建設支援
サンパウロ日伯援護協会に神内医療福祉基金設立
アマゾニア病院医療施設整備支援
カンポス肺療養所改装支援
南米香川県人会館建設支援
日系移民高齢者介護関連施設の拡充及び同施設維持運営のための基金の設立
アマゾニア日伯援護協会に神内医療福祉基金設立

 

サンパウロ日伯友好病院

 

ペルー共和国
ペルー新報社へのオフセット印刷機寄贈
神内先駆者センター建設及び運営支援
移住百周年記念病院建設支援
移住百周年記念病院医療機器整備支援
老人介護研修
神内日秘高齢者支援センター建設支援

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「ペルー移住百周年記念病院」

 

パラグアイ共和国
神内日系社会福祉センター建設支援
日系診療所医療機器整備支援
神内日系社会福祉センター改修工事支援

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パラグアイ日系社会福祉センター(パラグアイ神内福祉センター)」

 

コロンビア共和国
コロンビア日系人協会神内記念館(総合福祉施設併設)建設支援
日本の伝統的武道の普及、国際交流を目的にした武道館の建設支援


ボリビア多民族国
ボリビア農業技術センター(セタボル財団)再構築支援
サンファン日ボ協会およびオキナワ日ボ協会への福祉基盤整備支援

 

 

二人の日系人が米球界入り:日系アメリカ人のケストン・ヒウラ内野手、日系ブラジル人のエリック・パルディーニョ投手

アメリカとブラジルから、将来有望な日系人が米球界入りすることになりました。アメリカではケストン・ヒウラ二塁手ミルウォーキー・ブリュワーズにドラフト指名され、そしてブラジルからはエリック・パルディーニョ投手がトロント・ブルージェイズと契約を結びました。今後、活躍が期待される二人の日系人選手の情報をまとめました。

 

1.ケストン・ヒウラ (Keston Wee Hing Natsuo Hiura)

●1996年8月2日生(21歳)

カリフォルニア州バレンシア

●カリフォルニア大学アーバイン

●日系三世(父方の祖母が日本人。中国系でもある。)

ケストン・ヒウラ選手はバレンシア高校時代から好打者として注目されていました。高校三年次では打率.500、14本塁打、30打点を記録し、Player of the Yearにも選出。しかし高校卒業時にはMLBから指名されずカリフォルニア大学アーバイン校に進学。大学リーグでは1年生から活躍し全米大学選抜選手にも選出されました。その際、来日して全日本選抜と対戦しています。2017年シーズンは、56試合で打率.442、8本塁打、42打点。OPSは1260を記録。その活躍が高く評価されドラフト前から注目されていましたが、ミルウォーキー・ブルワーズから1巡目全体9位で指名されました。

しかし、ヒウラ選手は右ひじに故障を抱えており、トミー・ジョン手術を受ける可能性があります。打者としての高評価と、故障が完治すると見込んでの指名で、数年後のメジャーでの活躍が期待されます。

Keston Hiura, right, laughs with UCI coach Mike Gillespie in the dugout during a game in 2016. (Staff photo by Matt Masin, The Orange County Register/SCNG)

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2.エリック・パルディーニョ (Eric Eiji Taniguchi Pardinho)

●2001年5月1日生(16歳)

●ブラジル国サンパウロ州バストス

ヤクルト野球アカデミー

●母親が日系二世

エリック・パルディーニョ選手は2016年9月のWBC予選ラウンドのパキスタン戦で、15歳ながらも最速94マイル(約151キロ)を計測して、MLBのスカウトに注目されるようになりました。毎年有望選手をリストアップするMLBパイプラインの海外選手ランキングでもドミニカ共和国ベネズエラなどの選手に交じって5位にランクインしました(投手では最上位)。

エリックが生まれ育ったサンパウロ州バストスは、戦前からの日系入植地。今でも多くの日系人が住み、日系人の野球クラブが存在します。そこで8歳で野球を始め、12歳からはサンパウロ州イビウーナのヤクルト野球アカデミーで3年間、元広島の玉木氏などから、日本式の投球術を学びました。昨夏に行われたU-16パンアメリカ大会では、ドミニカ共和国代表相手に12三振を奪って勝利に貢献。その後、フル代表メンバーとしてWBC予選にも参加してポテンシャルを見せつけました。そして7月2日のMLBマチュア契約解禁日を迎え、複数球団からオファーがある中、トロント・ブルージェイズと140万ドル(約1億6千万円)でマイナー契約ESPNでも取り上げられるなど、ブラジルが誇るスピードピッチャーとして注目されています。

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「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」の提言、「協力」から「連携」関係へ

外務省が開催した「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」において合計4回の会合を経て提言がまとめられ、2017年5月9日、外務大臣の代理として薗浦健太郎外務副大臣に報告書として提出されました。

「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」報告書の薗浦外務副大臣への提出1

「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」報告書の薗浦外務副大臣への提出(結果) | 外務省

 

今回の提言の主題は、日本と日系社会の関係を、日本の「協力」から、両者の「連携」に発展させること。報告書の内容は網羅的なものではありますが、強調されているのは、以下の3点だと考えます。つまり、これらは現時点での課題ともいえます。

 1.次世代育成、日系団体に属していない日系人の取り込み

 2.親日家・知日派の非日系人との連携

 3.オールジャパンでの対応

 

1.次世代育成、日系団体に属していない日系人の取り込み

ブラジルやペルーでは、世代が4世、5世、6世まで伸張している中、各国の日系団体に属していない日系人も多くいます。その中には、各国の様々な分野で活躍している人材も多数含まれます。こうした日系人材にも、日本への関心をもってもらうような取り組みが必要です。主要な日系団体を活用することも行うべきですが、既存の枠組みにとらわれない柔軟なアプローチも必要と考えます。ペルーやアルゼンチンなど、既に若手日系グループが活発に活動しており、日本から直接そうしたネットワークにつながっていくことも重要です。

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2.親日家・知日派の非日系人との連携

日本政府やJICA、地方自治体等が実施している日系事業は、どうしても対象が日系人に限定されているものがほとんどです。もともと、移住者支援から始まった事業であるためです。他方で、ブラジル等では、親日家・知日派の非日系人が、日本文化に関心を持ち、日系社会・日系団体の活性化にも貢献しています。政府の日系事業であっても、日系社会のためになるのであれば、非日系人にも対象を広げていくべきでしょう。必ずしも日本の「血統」にこだわる必要はないと考えます。

 

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3.オールジャパンでの対応

外務省、農水省文科省、JICA、国際交流基金日本財団地方自治体、大学、民間・NPO、海外日系人協会等、様々なアクターがおり、それぞれ(一部連携しながら)活動しています。日本と日系社会の各アクターが重層的に活動しながらも、よりダイナミックな関係を構築するために、強力な司令塔のもとでの連携強化が重要です。

 

今回の提言は、平成12年(2000年)の海外移住審議会からの意見以降で、はじめてとなるまとまった提言内容となります。17年前とは、日本、日系社会、そして在日日系人が置かれている状況は変わってきています。それぞれが活躍できる具体的な方策が、柔軟かつ迅速に実施されることを望みます。

 

この「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」は、日本ではほとんどマスコミ報道されていませんが、ブラジルでは現地邦字新聞で取り上げられており、日系社会の期待も大きいです。

 

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「日本語指導が必要な子ども」が4万3千人以上。そのうち日系人が多く、ブラジル政府も支援を検討。

文部科学省が公表した『日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成28年度)』によると、「日本語指導が必要な児童生徒」は4万3千人以上(外国籍が3万4,335人、日本国籍が9,612人)で、前回調査よりも約6,800人(約18.5%)増加したという結果となっています。 

日本語指導が必要な「外国籍の児童生徒」を母語別で見ると、前回調査と同様、ポルトガル語母語とする者が 25.6%(前回28.6%)と最も多く、次いで、中国語が23.9%(22.0%)、フィリピノ語が 18.3%(17.6%)、スペイン語が 10.5%(12.2%)であり、これらの4言語で全体の 78.2%(80.4%)を占めています。特に、ポルトガル語スペイン語を合わせると36.1%であり、このうち、ほとんどが中南米日系人やその家族であると考えられます。

日本語指導ができていない理由としては、担当教員又は指導者がいない(不足を含む)と回答した学校が最も多い結果となっています。外国人集住地域以外でも外国籍の生徒が増えていることから指導者不足は深刻な状況と言えます。

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このような状況下、ブラジル政府も「在日ブラジル人子弟の教育問題」に強い関心を持っています。現地邦字紙「ニッケイ新聞」によると、6月14日には、連邦上院の教育文化スポーツ委員会にて公聴会が開かれ、在日ブラジル人は言葉や文化の違いによる障害の大きさから、日本の教育機関への適応が難しいこと、そのため退学の問題が頻発し(日系人の中学卒業率は6~7割とも言われる)、さらにブラジル人子弟による不登校や非行を招いていることなどが、指摘されています。
その対策として、ブラジル教育省は、ブラジルの大学の日本語学科で学ぶ学生による「在日ブラジル人子弟への課外プログラム」を提案しています。具体的には、「学科の修了時に半年ほど奨学生として日本の大学で研修を受け、モニターとして子弟らが通う教育機関で放課後の補習プログラムや、ブラジル人向け保育園での研修を行なう」内容です。インターンやボランティアプログラムのような方式ですね。日本政府がブラジルの日系社会における日本語教育をJICAボランティアで支援しているのと同様に、ブラジル政府が在日ブラジル人を支援するというもののようです。

現在ブラジル国内の7つの大学で日語学科が設立され、毎年約150人が修了しているとのこと。また、日本にブラジル人学校は約70校(うちブラジル政府公認が30校)あるといわれています。日語学科修了者のうち、どの程度の人数が関心を持つのかわかりませんが、実現したら面白いプログラムです。日語学科の学生のみならず、ブラジルの日系人が日本でボランティアを行うプログラムがあってもいいと思います。

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