日系 Nikkey パートナーズ

日系人、ボランティア、開発について、自分の勉強のためにも書いていきます。

映画『禅と骨 Zen and Bones』を鑑賞、アイデンティティの混乱だけでは語れない情熱

日系アメリカ人の禅僧を追ったドキュメンタリー映画『禅と骨 Zen and Bones』を見ました。不思議な映画でしたが、主人公のヘンリ・ミトワの波乱万丈、わがまま、自分勝手とも言える生き方をドラマ、アニメも交えて描いた、すばらしい作品でした。ただ、この人が自分の家族だと、かなり迷惑ですが。

f:id:ohatyuu:20171029210821p:plain

 

www.youtube.com

 主人公のヘンリ・ミトワは、1918年、横浜でドイツ系アメリカ人の父と新橋の芸者だった母の間に生まれた日系アメリカ人。裕福だった幼年期から父親の米国帰国後は貧しい生活を強いられました。また日本では外国人として特高警察にマークされ、1940年に米国に渡ってからは敵性外国人として収容所に収監されています。ちなみに、収容所で日本人と結婚し、長女、長男ももうけています。

戦後は、ロスアンジェルスで仕事も成功し、幸せな家族を築きますが、日本に残してきた母親の死後、日本への思いが強くなり、日本に戻ることを決意。ここから家族を巻き込み、ある意味狂ったように、禅僧でありながらも人間臭く、あがいた人生。

傍から見ると、日本とアメリカのアイデンティティがかなり混乱しているように映りますが、肯定的にとると、日本文化、母親への愛、禅、映画などへのミトワの情熱が湧き出したものとも感じます。奥さん、子供達は、そんな暴君のミトワに翻弄され、時には喧嘩しつつも、冷静に受け止めているように見えたのも良かったです。

 

ところで、日系人強制収容所での経験について、ミトワは強制ではなく、自主的、ボランティアで入ったと語っているのが、アレっと思いました。単なる強がりかとも感じましたが、本人としてはやはり複雑な思いがあるのでしょうか。

強制収容所で行われた日系人に対する忠誠心を確認する調査項目には「米国に忠誠を誓い、日本への忠誠を放棄するか」「米軍に従軍する意思があるか」という2つの質問があり、日系人は YES / NO の選択を迫られました。「YES YES」と答えたものは米軍兵士として戦場に参加する道もあり、「NO NO」の場合は収容所に留められ、さらに環境の厳しい収容所に移されました。
ミトワは最初、「YES YES」と回答したものの、その後、「NO NO」に変更し、米国市民権を放棄し、日本への帰国を申請。そのため、収容所生活は長期化し、最初はヒラリバー収容所、それからトパーズ、トゥーレイクに移転しています。いわゆるノー・ノー・ボーイ だったんですね。ミトワはのちに米国市民権を回復しています。

映画の最後で、収容所で生まれた長女が、収容所跡地を訪問しているシーンがありましたが、収容所での経験も、後のミトワのアイデンティティの混乱ぶり、日本文化への傾倒に深く影響を与えたのではないかと思いました。

ノーノー・ボーイ

ノーノー・ボーイ