「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」の提言、「協力」から「連携」関係へ
外務省が開催した「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」において合計4回の会合を経て提言がまとめられ、2017年5月9日、外務大臣の代理として薗浦健太郎外務副大臣に報告書として提出されました。
「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」報告書の薗浦外務副大臣への提出(結果) | 外務省
今回の提言の主題は、日本と日系社会の関係を、日本の「協力」から、両者の「連携」に発展させること。報告書の内容は網羅的なものではありますが、強調されているのは、以下の3点だと考えます。つまり、これらは現時点での課題ともいえます。
1.次世代育成、日系団体に属していない日系人の取り込み
3.オールジャパンでの対応
1.次世代育成、日系団体に属していない日系人の取り込み
ブラジルやペルーでは、世代が4世、5世、6世まで伸張している中、各国の日系団体に属していない日系人も多くいます。その中には、各国の様々な分野で活躍している人材も多数含まれます。こうした日系人材にも、日本への関心をもってもらうような取り組みが必要です。主要な日系団体を活用することも行うべきですが、既存の枠組みにとらわれない柔軟なアプローチも必要と考えます。ペルーやアルゼンチンなど、既に若手日系グループが活発に活動しており、日本から直接そうしたネットワークにつながっていくことも重要です。
日本政府やJICA、地方自治体等が実施している日系事業は、どうしても対象が日系人に限定されているものがほとんどです。もともと、移住者支援から始まった事業であるためです。他方で、ブラジル等では、親日家・知日派の非日系人が、日本文化に関心を持ち、日系社会・日系団体の活性化にも貢献しています。政府の日系事業であっても、日系社会のためになるのであれば、非日系人にも対象を広げていくべきでしょう。必ずしも日本の「血統」にこだわる必要はないと考えます。
3.オールジャパンでの対応
外務省、農水省、文科省、JICA、国際交流基金、日本財団、地方自治体、大学、民間・NPO、海外日系人協会等、様々なアクターがおり、それぞれ(一部連携しながら)活動しています。日本と日系社会の各アクターが重層的に活動しながらも、よりダイナミックな関係を構築するために、強力な司令塔のもとでの連携強化が重要です。
今回の提言は、平成12年(2000年)の海外移住審議会からの意見以降で、はじめてとなるまとまった提言内容となります。17年前とは、日本、日系社会、そして在日日系人が置かれている状況は変わってきています。それぞれが活躍できる具体的な方策が、柔軟かつ迅速に実施されることを望みます。
この「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」は、日本ではほとんどマスコミ報道されていませんが、ブラジルでは現地邦字新聞で取り上げられており、日系社会の期待も大きいです。